BtoBマーケティングの内製化は、多くの企業が一度は検討するテーマです。しかし、ノウハウの蓄積や運用ツールの選定、そして「広告代理店に任せていた業務をどう引き継ぐか」という壁に阻まれ、なかなか踏み出せないケースが大半です。本記事では、Vegimaxが伴走支援したSaaS企業の事例をもとに、立ち上げから6ヶ月で社内チームが自走するまでに実行した3つの施策を解説します。
クライアント概要と当初の課題
支援対象となったのは、従業員規模100名前後のBtoB SaaS企業です。創業から数年が経過し、シリーズBの資金調達を完了したタイミングで「マーケティング機能を内製化したい」という相談をいただきました。
当時の状況は以下の通りでした。
このフェーズでよくある誤解は、「内製化すればコストが下がる」というものです。しかし実際には、人材獲得・教育・ツール導入と、コスト構造はむしろ複雑になります。重要なのは「内製化によって意思決定スピードと再現性を上げ、事業成長率を引き上げる」という目的設計です。
6ヶ月のロードマップ
支援開始時に、6ヶ月で「外部代理店ゼロ」を目指すロードマップを引きました。フェーズごとのマイルストーンは以下の通りです。
このロードマップを軸に実行した3つの施策を、以下で詳しく解説します。
実行した3つのこと
1. SOP(標準業務手順書)の整備
支援開始時、まず取り組んだのが運用業務のSOP化です。広告アカウントの構成、入札戦略、クリエイティブ制作フロー、レポーティングなど、これまで代理店の中で属人化していた業務を1つずつドキュメントに落としていきました。
ポイントは「マニュアル」ではなく「なぜこの設定にするのか」という意思決定の根拠まで含めて記述することです。たとえば「コンバージョン値の設定はLTVベースで」という指示だけでは社内に浸透しません。「LTVベースに設定する理由は、機械学習が高単価顧客に最適化されるため」という背景までセットで残すことで、応用が利く知識資産になります。
結果として、6ヶ月で約40件のSOP文書が作成され、社内のNotionに整理されました。新しく入社したメンバーがこのドキュメントを見れば、入社2週間で運用キャッチアップできる状態になっています。
2. 並走運用フェーズの設計
いきなり「来月から内製で」と切り替えるのは現実的ではありません。月3-4は「Vegimaxと社内チームが並走運用するフェーズ」を設計しました。
具体的には、社内担当者がアカウントの操作を行い、Vegimaxは設計レビューと相談対応に回るという役割分担です。週1回の定例ミーティングで実施案件のレビューを行い、判断に迷うポイントを言語化していきました。
このフェーズの肝は、支援側が「答えを出さない」ことです。Vegimaxは判断の枠組みは提供しますが、最終的な意思決定は社内チームに委ねました。「失敗してもいいから、自分たちで決めてもらう」という姿勢が、自走力の獲得に直結します。
3. データ基盤の社内移管
多くの企業で見落とされがちなのが、データ基盤の所有権です。代理店任せになっていると、Google Adsアカウント、GA4、CRM連携、レポートテンプレートなどの「データの土台」が代理店側に握られていることがあります。
このプロジェクトでは、月1のタイミングで以下を社内に完全移管しました。
- Google Ads / Meta広告アカウントの管理権限
- GA4とBigQueryへのエクスポート設定
- HubSpot とのオフラインコンバージョン連携
- Looker Studio での自動レポートテンプレート
この「データを自社で持つ」体制ができたことで、外部依存度は劇的に下がりました。
6ヶ月後の成果
施策実行から6ヶ月後、以下のような変化が生まれました。
| 指標 | 支援開始時 | 6ヶ月後 |
|---|---|---|
| 運用工数(社内) | 月12時間 | 月48時間 |
| 外部代理店費用 | 月80万円 | 月0円 |
| 意思決定リードタイム | 平均5営業日 | 即日〜2営業日 |
| マーケKPIレビュー頻度 | 月次 | 週次 |
| 商談化率 | 15% | 28% |
特筆すべきは、商談化率が15% → 28%へと改善した点です。これは「内製化したから」ではなく、「内製化の過程で意思決定の速度と質が向上した結果」と捉えています。広告とインサイドセールスの連携が密になり、リードの質に応じた即応運用が可能になったことが大きな要因でした。
まとめ
内製化は単なる業務移管ではなく、組織の意思決定プロセスを変える取り組みです。Vegimaxでは、6ヶ月の伴走を通じて「自走できる広告チーム」の立ち上げを支援しています。