スキンケアD2Cブランドにとって、季節商材は「年に2〜3ヶ月だけ売れる」存在になりがちです。本事例では、夏の日焼け対策アイテムを主力とするブランドが、検索需要の波に翻弄されていた状態から「通年で売れる資産」へと運用設計を再構築した6ヶ月の取り組みをご紹介します。
クライアント概要
支援対象は、夏向け日焼け対策ジェルを主力商品とする女性向けスキンケアD2Cブランド。創業3年で年商は5億円規模、自社ECとAmazonでの販売を中心に展開しています。
ご相談のきっかけは、創業者からの「6月〜8月だけ売れて、それ以外の月は赤字」という構造への危機感でした。
支援開始時の課題
課題1:「検索需要のピークだけ」を狩る運用になっていた
広告運用は「日焼け止め」「UVケア」など季節キーワード中心の検索広告に集中。需要ピーク(6月〜8月)には機械学習が間に合わず、競合との入札合戦でCPCが高騰。結果としてCPAは平時の2.5倍に膨らみ、利益率が圧迫されていました。
課題2:ブランド検索の取りこぼしが大量発生
ピーク期に獲得した顧客の多くがリピートせず流出していました。さらに調査すると、ブランド名検索の3割をAmazonの並行販売者に奪われていることが判明。せっかく広告で作った認知が、自社ECの売上に繋がっていなかったのです。
課題3:オフシーズンに「打つ手がない」
9月以降は広告予算をほぼゼロまで絞らざるを得ず、CRMやSNSも止まっていました。年間で「攻めの月」と「停止の月」がはっきり分かれており、ブランド資産が育たない状態でした。
実施した3フェーズの再構築
フェーズ1(月1-2):繁閑分離型アカウント設計
まず、Google・Yahoo!・Meta広告のアカウント構造を「繁閑分離型」に再設計しました。繁忙期用キャンペーン(CAMP A)と通年用キャンペーン(CAMP B)を物理的に分離し、それぞれ独立した学習データを蓄積させる構造です。
翌年の繁忙期にもCAMP Aを再稼働させる前提で、停止ではなく「予算ゼロでの休眠」状態に切り替えるルールを設定。機械学習が毎年リセットされる課題が、この設計で構造的に解消されました。
フェーズ2(月3-4):ブランド指名検索とCRMの強化
並行して、奪われていたブランド指名検索を取り戻す施策を実施しました。指名検索専用キャンペーンを低予算で通年稼働させ、Amazonへ流れていたトラフィックを自社ECに引き戻しました。
さらに、購入後フォローのCRM体制を整備。「夏に購入した顧客」に対して、保湿ケア・冬のスキンケアを提案するシナリオメールを構築し、季節を超えたリピート設計を行いました。
フェーズ3(月5-6):通年商材へのライン展開
最後の2ヶ月では、サブ商品の戦略的開発を支援。日焼け止めから派生する「アフターサンケア」「保湿ジェル」というラインを追加し、夏のピーク需要を秋冬の購買へとつなげる商品設計に再構築しました。
6ヶ月後の成果
| 指標 | 支援開始時 | 6ヶ月後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| CPA(通年平均) | ¥4,200 | ¥2,480 | −41% |
| ROAS(繁忙期) | 186% | 312% | +68% |
| ブランド検索CV取得率 | 62% | 94% | +52% |
| オフシーズン売上 | 月280万円 | 月860万円 | ×3.1 |
| リピート購入率 | 11% | 28% | +155% |
| 年間売上 | 5.0億円 | 8.5億円 | ×1.7 |
特に大きかったのは、オフシーズン売上が月280万円→月860万円へと3.1倍に拡大したことです。これにより事業全体のキャッシュフロー安定性が大きく改善し、新商品開発への再投資が可能になりました。
数字以外の変化
本事例から得られた示唆
季節商材の運用課題は、広告アカウント構造の問題に見えて、実は「事業をどの時間軸で設計するか」という経営判断の問題です。広告を「夏のピークだけ最大化するもの」と捉えるか、「通年で資産を積み上げるもの」と捉えるか、その視点の違いが事業構造そのものを変えていきます。
D2Cにおいて重要なのは、需要ピークの最大化ではなく「需要が薄い月にどれだけ顧客接点を維持できるか」です。CRM・指名検索・サブ商品ラインを組み合わせ、年間を通じた資産化を図ることが、安定成長への最短ルートだと言えます。