製造業のBtoBサイトでは、「技術資産は豊富にあるのに、決裁者には届いていない」という構造的なズレが起きがちです。本事例では、業界トップクラスの技術力を持ちながらWebからの商談がほぼ生まれていなかった産業機械メーカーが、サイトリニューアルと媒体設計の刷新で商談数を3.1倍に拡大した事例をご紹介します。
クライアント概要
支援対象は、半導体製造装置の特殊部品を手がける産業機械メーカー。創業40年以上、業界では技術力で高い評価を受けており、海外シェアも一定数を獲得しています。年商は約60億円、従業員数は180名規模です。
相談のきっかけは、社長からの「展示会と紹介ばかりで、Web経由の新規取引がほぼない」という危機感でした。
支援開始時の課題
課題1:技術コンテンツが「読み手不在」になっていた
サイトには製品仕様、技術論文、採用事例といった豊富なコンテンツが掲載されていましたが、すべてが技術者向けの専門用語で書かれており、決裁者(経営層・購買担当役員)が読んでも価値が伝わらない状態でした。
課題2:問い合わせ動線が「営業に投げる」一択
コンバージョンポイントは「問い合わせフォーム」のみ。情報収集段階の見込み顧客が手前で離脱しており、商談に至る前のライトな接触機会がゼロでした。
課題3:媒体露出が技術系メディアのみ
広告出稿先は業界専門誌や技術系Webメディアに限定されており、決裁権を持つ経営層にはほぼリーチできていませんでした。役員がよく見る経済メディアやLinkedInなどへのアプローチは未着手でした。
実施した3フェーズの再構築
フェーズ1(月1-3):3層IAでサイト全体を再設計
まず取り組んだのは、サイトの情報設計(IA)の全面再構築です。「技術者向け(第2層)」「決裁者向け(第3層)」「情報収集者向け(第1層)」と読み手別に情報を整理し、それぞれ独立した動線を設計しました。
特に大きな変更は、TOPページのファーストビューです。それまでの製品写真中心から、「導入企業100社」「歩留まり改善実績 平均15%」など、経営層の関心に直接訴える数字を主役に配置しました。
フェーズ2(月4-6):ホワイトペーパー起点の動線設計
続いて、決裁者の購買検討を支援するホワイトペーパーを5本制作しました。単なる製品紹介ではなく、「業界課題の整理 + 解決アプローチ + 投資対効果のシミュレーション」という構造で、そのまま稟議書の根拠資料として使える形式に設計しました。
DLしたユーザーには、業界別・部門別にセグメント分けされたメールシナリオを設定。インサイドセールスチームと連携し、温まったリードのみが商談に進む仕組みを構築しました。
フェーズ3(月7-8):経営層へリーチする媒体戦略
最後の2ヶ月は、媒体露出の幅を広げました。日経電子版・東洋経済オンライン・LinkedInなど経営層が目にするメディアへ広告出稿を開始し、Meta広告でも「製造業の役員・部長クラス」をターゲティングする精緻な配信設計に切り替えました。
8ヶ月後の成果
| 指標 | 支援開始時 | 8ヶ月後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| サイトCVR | 0.4% | 0.96% | ×2.4 |
| 月間ホワイトペーパーDL数 | 28件 | 192件 | ×6.9 |
| 役員クラスのDL割合 | 11% | 31% | +182% |
| 月間商談数 | 7件 | 22件 | ×3.1 |
| Web経由の年間契約金額 | 1.8億円 | 7.2億円 | ×4.0 |
| 新規取引先(企業)数 | 年4社 | 年18社 | ×4.5 |
特に注目すべきは、役員クラスのホワイトペーパーDL割合が11% → 31%へと急増した点です。これにより、商談化に至る前段階で「決裁権のある人」がコンテンツに触れる機会が増え、その後の意思決定スピードが大幅に短縮されました。
数字以外の変化
本事例から得られた示唆
製造業のBtoBサイトでよく見られるのは、「技術力のショールーム化」という状態です。情報は豊富にあるのに、誰のためのサイトか曖昧で、決裁者には何も伝わらない。この構造を抜け出すには、「読み手別の情報設計」と「決裁者を意識した媒体戦略」を同時に再構築する必要があります。
技術力という強みを「事業成果」として届けるためには、コンテンツそのものよりも「届け方の設計」が肝になります。本事例は、その重要性を改めて示すものとなりました。