中堅広告代理店が抱える共通課題、それは「営業力で受注は伸びるが、運用キャパが追いつかない」という構造です。本事例では、社員50名規模の中堅広告代理店から運用・入稿業務をフルアウトソースで受託し、代理店の収益性とクライアント満足度を同時に向上させた取り組みをご紹介します。なお、本事例は機密保持の観点から複数の取引代理店の事例を抽象化したものです。
クライアント概要
支援対象は、社員50名規模、年商数十億の中堅広告代理店です。Web広告を主力事業とし、クライアントは中小〜中堅企業が中心。BtoB・BtoC問わず幅広い業種を扱っています。
ご相談のきっかけは、代表からの「営業は強いのに、納品体制がボトルネックになって受注を断らざるを得ない案件が出始めた」という危機感でした。
支援開始時の課題
課題1:運用者の慢性的なリソース不足
代理店内の運用チームは10名体制でしたが、1人あたり15〜20アカウントを並行で見ており、定型業務に追われて改善提案までは手が回らない状態でした。新規受注が決まるたびに既存案件の品質が下がるという悪循環に陥っていたのです。
課題2:入稿・タグ設定など「単純作業」の埋没
運用者の時間の多くが、媒体への入稿作業、タグ設定、媒体審査対応などの「単純だが時間のかかる定型業務」に費やされていました。本来、戦略立案や数値改善といった高付加価値業務に時間を使うべき運用者が、定型業務で疲弊していました。
課題3:採用しても育つ前に離脱する
採用も並行していましたが、運用者は教育コストが高く一人前になるまで6〜12ヶ月かかります。さらに、育っても他社へ転職するケースも多く、人材投資が事業成長に直結しにくい構造がありました。
実施した3フェーズの運用体制再構築
フェーズ1(月1):役割分担とバウンダリ設計
まず最も重要なのが、代理店内とVegimaxの「業務境界線」をクライアントごとに明確化する作業でした。何でもかんでも丸投げするのではなく、クリエイティブ・戦略提案・クライアント折衝は代理店、運用・入稿・レポート作成はVegimaxという線引きを徹底しました。
特にクリエイティブは、各クライアントごとに薬機法・景表法・媒体ガイドライン・トンマナといった独自レギュレーションが存在します。これらを踏まえた制作判断は代理店側に残し、Vegimaxは渡された素材を入稿する、というシンプルな役割分担としました。
フェーズ2(月2-3):パイロット運用とフロー検証
いきなり全アカウントを移管するのではなく、まず5アカウント程度のパイロット運用から開始しました。Slackでの日次やり取り、Looker Studioでの共通レポートテンプレート、入稿チェックフローなど、運用フローの叩き台をこの期間に固めました。
パイロット期間に出てきた「代理店との連携で発生する詰まりポイント」を1つずつ潰し、運用マニュアルとして50ページ規模にまとめました。これにより、その後の移管がスムーズに進む土台ができました。
フェーズ3(月4):全アカウント本格移管
月4には、約120アカウントを段階的にVegimax側へ移管しました。代理店内の運用者は、解放された時間を改善提案・戦略立案・クライアント折衝に再配分。「代理店としての提供価値そのもの」を磨くことに集中できる体制が完成しました。
4ヶ月後の成果
| 指標 | 支援開始時 | 4ヶ月後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 運用者1人あたり管理アカウント数 | 15-20 | 35-45 | ×2.3 |
| 運用工数(代理店内側) | 月1,600h | 月610h | −62% |
| 戦略提案・改善業務に充てる時間 | 15% | 52% | +247% |
| クライアント満足度(NPS) | +12 | +46 | +34pt |
| 新規案件受注辞退率 | 月3-4件 | 月0件 | 解消 |
| 代理店としての営業利益率 | 9% | 18% | ×2.0 |
注目すべきは、代理店としての営業利益率が9% → 18%へと2倍に拡大している点です。アウトソースの外注費が増えたにも関わらず利益率が伸びたのは、運用者が「より付加価値の高い業務」に時間を使えるようになり、案件単価そのものが上がったためです。
数字以外の変化
本事例から得られた示唆
広告代理店業界では、運用業務のキャパシティが事業成長の上限になりがちです。しかし、すべての業務を内製で抱える必要はありません。代理店の「コア業務」と「非コア業務」を明確に分け、非コア部分をアウトソースすることで、組織全体のパフォーマンスは大きく変わります。
特に、入稿・タグ設定・レポート作成といった定型業務は外部化しやすい領域です。一方で、クリエイティブの審査対応や戦略提案など、各社のレギュレーションや関係性に依存する業務は内製で残すべきです。Vegimaxはこの境界線を明確にした上で、代理店のキャパ補完パートナーとして伴走しています。